膝靭帯断裂

膝靭帯断裂(ひざじんたいだんれつ)とは?

関節には骨と骨を結んで安定させるために靭帯(じん帯)という組織があります。膝にも大切な靭帯があり、内側、外側、前方、後方とあります。それぞれ、内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯と呼ばれています。
靭帯損傷とは、スポーツや事故などのケガによって靭帯が傷つくことで、膝を動かすと痛い、ぐらぐらするなどの症状が出ている状態です。一度損傷すると完全には元に戻りにくいので、ケガの直後からケアが必要です。一度のケガで複数の靭帯が損傷するケースもあり、」この場合は手術治療になることが多いです。

治療法

保存療法

 損傷を受けた靭帯に負担をかけないようにするのが治療の基本です。関節を変な方向にいかないように固定しているのが靭帯ですので、その靭帯が頑張らなくていいようにサポータなど外側から固定するのが治療です。固定をしないと、ぐらつきが残り、再びケガしやすくなります。治療は、ギプスまたはサポータを作成し、常時つけておくことから始めます。膝は体重がかかる部位ですので、場合によっては松葉づえなどを使用して、膝にかかる荷重をコントロールすることもあります。改善具合に合わせて、歩く、早歩きする、ジョギングするなどと段階的にできることを増やしていきます。

 もっとも損傷することが多いのは内側側副靱帯です。スポーツ中に接触プレーをして転んだり、日常生活で足を滑らせたりして内側が痛くなる時に損傷を疑います。後十字靭帯損傷は、前に転倒して膝の前面を強打した際に、膝の後ろの壁をなしている後十字靭帯が損傷するものです。前を打ったのに後方が痛い、直後から膝全体がどんどんはれてきた(内出血のサイン)際に疑います。いずれも、自分で修復する能力がある靭帯ですので、まず固定による治療を行います。一定期間の固定、その後のリハビリなどの治療を行い、どうしてもぐらつきが残って支障が出るときは、手術療法を行います。


手術療法

 なかでも前十字靱帯は、スポーツ活動中に損傷する割合が多いケガです。ジャンプでバランスを崩して着地で膝崩れした、フェイントをかけて方向転換した際にひねった、対人プレー中に外側から相手の膝が入ったなどの動きで受傷します。「ケガして一時動けなかったが、続けて試合に出られた。でも、走ったら急に止まれない、方向転換で膝が抜けそうだった」というようなケースも前十字靭帯の損傷を疑います。整骨院でねん挫と言われた、救急外来でレントゲンを撮ったが骨には異常ないといわれたというケースも多いです。多くの場合は、受傷の日から翌日にかけ膝がはれてきます(内出血)。1か月ほどすると痛みもはれもひいて、見た目には問題ないようですが、膝が安定しない症状は残ることが多いです。スポーツを再開してから数か月ほどたって、半月板のロッキング症状で動けなくなって、病院に担がれてくる中高生を診察することもよくあります。膝をひねったようなケガの際には、早めにスポーツを扱っている整形外科を受診して、どのようなケガだったか、ぐらぐらするのかなどの問診や、ぐらつきの評価などの診察、そして何よりMRIを用いた損傷の評価が必要です。

 当院では、前十字靭帯に対しては基本的には手術療法を勧めています。放置しておくと多かれ少なかれ、膝のぐらつきが残り、続いて起こる半月板損傷、軟骨損傷などが変形性膝関節症を引き起こすからです。 手術療法では一般に関節鏡を用います。前十字靭帯は切れている部位を縫うなどして戻しても、ぐらつきが残りやすいのが判明していますので、自分のハムストリング腱、膝蓋腱などを用いた靭帯再建術が行われています。手術後は移植した靭帯を保護する期間をおいて、徐々に運動レベルを上げ、数か月してからは一人ひとりの競技に合わせた専門的なリハビリを行います。再度おなじケガをしないような体づくりを含めたリハビリを当院では行っております。

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